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【実践ガイド】リスキリング助成金を活用!町工場の「現場の見える化」をコストを抑えて実現する方法

公開日:2025年9月16日

「人手不足が深刻化しているのに、若手はなかなか定着しない」

「熟練工の技術を、どうやって若手に継承すればいいのか…」

「DXの重要性は分かるが、具体的に何から手をつければいい?」

このような悩みを抱える経営者様は少なくないでしょう。変化の激しい時代を乗り越え、会社を成長させていくためには、デジタルの力を活用した生産性向上(DX)と、変化に対応できる人材の育成(リスキリング)が不可欠です。

しかし、日々の業務に追われる中で、新たな取り組みに踏み出すのは容易ではありません。

そこで本記事では、製造現場のDXの具体的な選択肢の一つとして、リアルタイムで稼働状況を把握できる「生産管理システム」や「現場の見える化ツール」の導入を例に挙げ、国の助成金を活用して、コストを抑えながらDXと人材育成を両立させる流れを解説します。

なぜ今「リスキリング助成金」と「現場の見える化」が必要なのか?

多くの製造業が直面している「人手不足」「技術継承」「生産性の頭打ち」といった根深い課題を解決する鍵こそが「生産管理システムの導入」と「現場の見える化」です。

  • 勘と経験への依存から脱却

熟練工の頭の中にしかなかった進捗状況やノウハウをデジタルデータとして誰もが見える形にすることで、業務の属人化を防ぎ、組織全体の生産性を底上げします。

  • 若手が育ちやすい環境へ

作業の手順や進捗がタブレット一つで分かれば、若手社員も安心して業務に取り組めます。日報作成のような付帯業務も自動化でき、本来やるべき「ものづくり」に集中できる環境は、若手の定着率向上にも繋がります。

  • 的確な経営判断を実現

正確な工数や稼働状況がリアルタイムで把握できれば、精度の高い見積もり作成や、的確な納期回答が可能になり、顧客からの信頼も厚くなります。

このように、DXによる「現場の見える化」は、目の前の課題解決だけでなく、企業の競争力を根本から強化するポテンシャルを秘めています。

意外と知らない?リスキリング助成金の基本

DX推進の強力な追い風となるのが「リスキリング助成金」です。新しいシステムを導入しても、それを使いこなせる人材がいなければ宝の持ち腐れです。

国は、DXに必要なスキルを従業員に習得させるための「人づくり」にかかる費用を、この助成金で手厚く支援してくれるのです。

助成金は「システム利用料」ではなく「人を育てる費用」に出る

それでは、具体的に助成金をどう活用するのかを見ていきましょう。まずは、多くの方が誤解しがちな助成金の基本的なルールから押さえます。

リスキリング助成金(人材開発支援助成金)は、「生産管理システム」の月額利用料や、導入するタブレット端末・サーバーの購入費に直接充てることはできません。

この助成金の目的はあくまで「人材育成(リスキリング)」です。つまり、新しいシステムを従業員が使いこなし、収集したデータを見て現場を改善できるようになるための「訓練(研修)」にかかる費用と、その「訓練中の賃金」に対して支給されます。

「最適なツールの導入」と「それを使いこなす人材の育成」をセットで計画することが、助成金を賢く活用する最大のポイントです。

対象となる経費と助成率

具体的には、以下のような費用が助成の対象となります。

経費助成

  • システムベンダーが行う導入研修の受講料
  • データ活用の基礎を学ぶ外部研修やeラーニングの費用
  • 訓練を担当する外部講師への謝金 など

賃金助成

  • 従業員がOff-JT(通常の業務を離れて行う訓練)に参加している時間分の賃金

助成率は企業の規模などによって異なりますが、中小企業の場合は下記のような非常に手厚い支援が受けられます。例えば、100万円の研修費用がかかったとしても、助成率が75%であれば75万円は国が助成してくれる計算です。これを活用しない手はありません。

助成の種類助成率・助成額(中小企業の場合)
経費助成45%~100%
賃金助成1人1時間あたり800円~1000

※  助成額には1人1訓練当たりの限度額および限度時間が決められています。

※ 上記は2025年8月時点の情報です。制度は変更される可能性があるため、必ず最新の情報を厚生労働省のHP等でご確認ください。

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金」HP

助成金活用による「現場改善システム」導入への6ステップ

ここからは、いよいよ本題である実践的なガイドです。以下の6つのステップに沿って進めることで、計画的にDXと人材育成を実現できます。

ステップ1:課題を洗い出し「システム化で目指す姿」を明確にする

まず、なぜシステムを導入したいのか、自社の課題とゴールを言語化します。これが全ての土台であり、最も重要なステップです。

ここが曖昧なまま進むと、高価なシステムを導入したのに誰も使わない、という最悪の事態を招きかねません。

【現状の課題例】

  • 現場に行かないと、各工程の進捗が全く分からない。
  • 特定の熟練工にしかできない作業があり、その人が休むと生産が止まる(業務の属人化)
  • 若手が日報を手書きするのに時間がかかり、残業の原因になっている。
  • 正確な作業時間が分からず、見積もりがどんぶり勘定になっている。

【システム化で目指す姿(ゴール)】

  • 事務所のPCで、全案件の進捗状況をリアルタイムに把握できる。
  • 作業手順をデジタル化し、誰でもタブレットで見ながら作業できるようにする(多能工化の促進)
  • 日報を自動化し、日報作成の時間をゼロにする。
  • 正確な工数データを蓄積し、見積もり精度を向上させる。

ポイントは、ゴールを「誰が聞いても分かる具体的な言葉」で、できれば「数字」を入れて設定することです。このゴールが、後のシステム選びや訓練計画のブレない軸となります。

ステップ2:自社の課題を解決するシステムと「伴走してくれるパートナー」を選定する

ステップ1で明確になったゴールを実現するための、最適な武器(システム)と、その使い方を教えてくれる仲間(パートナー企業)を探すフェーズです。ここでの選定が、プロジェクトの成否を決めると言っても過言ではありません。

システム選定で失敗しないための比較検討ポイント

「製造業 生産管理システム クラウド」「町工場 DX ツール」などで検索すると、多くの製品が見つかります。以下のポイントを参考に、複数の製品を比較検討しましょう。

機能

自社の課題解決に必要な機能は揃っているか?(進捗管理、工数管理、日報作成、図面共有など)将来不要な機能までついた高価なシステムは避けましょう。

コスト

初期費用は?月額費用は?従業員数に応じた料金体系か?費用対効果を冷静に見極めることが重要です。

使いやすさ

現場の従業員が毎日使うものだからこそ、ITに不慣れな人でも直感的に使えるかどうかは絶対に外せない条件です。必ずデモや無料トライアルで、実際に現場の従業員に触ってもらいましょう。

サポート体制

導入時やトラブル発生時に、どのようなサポートが受けられるか?電話やメールだけでなく、訪問サポートの有無なども確認しましょう。

成功へ導くパートナーを見極めるポイント

成功するDXの鍵は、単なるシステム販売会社ではなく、実現まで伴走してくれるコンサルタントのようなパートナーを選ぶことです。

良いパートナーかを見極めるには、商談の際に「自社業界での具体的な改善実績」「導入後の現場定着までのサポート体制」「助成金を活用した導入計画のノウハウ」の3点を質問しましょう。これにより、相手の現場理解度、長期的な視点、そして制度知識を測ることができます。

これらの問いに誠実かつ具体的に答えられる企業こそ信頼できます。逆に、売りっぱなしで現場を見ず、メリットばかりを強調する企業では、導入がゴールとなり失敗に終わるため注意が必要です。

ステップ3:助成金のための「訓練計画」を立てる

導入するシステムとパートナーが決まったら、それを使いこなすための「訓練計画」を具体的に作成します。これが助成金申請の核となります。

訓練の名称

「生産性管理システム活用による現場改善スキル習得訓練」など

対象者

現場リーダー、若手社員、管理者など(役割ごとにコースを分けるのが望ましい)

カリキュラム内容

Off-JT(座学など)

  • 導入するシステムの提供元(ベンダー)が行う導入研修
  • データ活用の基礎を学ぶ外部のeラーニング講座

OJT(実務を通じた訓練)

  • 指導者社長や工場長、外部コンサルタントなど
  • 訓練内容の例

システムの正確な入力訓練

タブレット等を使い、作業の開始・終了・実績数を正確に入力するスキルを習得する。

データ分析と改善提案の訓練

収集したデータからボトルネック工程を特定し、改善策を立案・報告するスキルを身につける。

デジタル手順書の作成訓練

熟練工の技を動画や写真で記録し、システムに手順書として登録するスキルを習得する。

ステップ4:助成金の申請とシステムの契約

計画ができたら、いよいよ行動に移します。

  1. 助成金の計画届を提出
    ステップ3で作成した訓練計画書などを揃え、管轄の労働局へ提出します。

【最重要】計画届は、訓練を開始する日の6ヵ月前から1ヶ月前の間に提出する必要があります。 スケジュールは十分に余裕を持って進めましょう。

  • システムの契約
    助成金の申請手続きと並行して、ステップ2で選定したシステムのベンダーと利用契約を進めます。

ステップ5:訓練の実施と現場での運用スタート

労働局から計画届が受理されたら、いよいよ訓練とシステムの運用を開始します。

【訓練の記録を必ず残す】

計画に沿って訓練を実施し、必ず記録を残しましょう(訓練日誌、写真など)これらは後の支給申請で必須の書類となります。

【目的とメリットを丁寧に伝える】

新しいツールの導入には、現場の心理的な抵抗がつきものです。経営者や管理者が率先して活用し、「なぜこれを使うのか」「導入すると、みんなの仕事がどう楽になるのか」という目的とメリットを、自分の言葉で丁寧に伝え続けましょう。現場の定着を粘り強くサポートすることが、経営層の最も重要な役割です。

ステップ6:訓練の完了と支給申請

計画した全ての訓練が終了したら、最後の手続きです。

  1. 支給申請書の提出
    訓練が完了した日の翌日から2ヶ月以内に、労働局へ支給申請書を提出します。訓練日誌や経費の領収書など、必要な証明書類を全て添付します。
  2. 効果測定と次のステップへ
    審査を経て助成金が振り込まれます。

ただし、ここで満足してはいけません。導入前に立てた「目指す姿」が実現できたか、効果測定を行いましょう(例:残業時間の削減率、生産リードタイムの短縮率など)

その結果を従業員と共有し、次の改善活動へと繋げていくこと、この継続的な改善サイクルこそが、本当の意味でのDX推進です。

まとめ|「最適なツール選び」と「使いこなす人づくり」が成功の鍵

町工場のDXは「これを入れれば必ず成功する」という魔法の杖ではありません。

  • 自社の課題と真摯に向き合い、身の丈に合った最適なツールを選び抜く「目利き」
  • そして、そのツールを現場で価値あるものに変える「人づくり」

この両輪が揃って、初めて大きな成果へと繋がります。

リスキリング助成金は、その重要な片輪である「人づくり」を国が力強く後押ししてくれる、非常に心強い制度です。

しかし、日々の業務に追われる中で、これら全てのステップを自社だけで進めるのは、決して容易なことではありません。特に、数あるシステムの中から自社の課題に最適なものを選び抜き、助成金を活用した効果的な人材育成計画を立てるプロセスには、専門的な知識と経験が求められます。

私たち株式会社イーポートは、単にツールを導入する「ベンダー」ではなく、現場に寄り添い、課題の洗い出しからシステム選定、助成金を活用した人材育成、そして導入後ぜひ一度、お気軽にご相談ください。貴社の未来を変える第一歩を、私たちが全力でサポートします。

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※助成金に関しては、様々な条件があります。本記事はあくまで一例としてご活用いただき、詳細の条件や申請手続きについては、管轄の労働局や社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

この記事を書いた人

イーポート システム開発部
イーポート システム開発部
システム開発、アプリ開発に関する情報をお届けします。
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