製造業における業務フロー作成の重要性
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製造業は、顧客からの注文を受けて商品を製造し、出荷するという複数の工程で成り立っています。
各工程で業務が複雑になりやすい傾向があることから、業務を可視化して全体を把握する目的で業務フローが活用されています。
本記事では、製造業における業務フロー作成時の手順や注意すべきポイントについて解説します。
製造業における業務フローとは?
製造業では、受注から出荷までの業務をスムーズに実施するために生産管理が行われています。
生産管理の業務フローには次の5つの段階があり、各段階で進捗を管理します。
1. 受注管理:見積もりの作成や契約内容などの情報管理
2. 生産計画:受注内容と自社の生産能力を踏まえた計画策定
3. 生産指示:生産計画を実行するための指示出し
4. 出庫指示:出庫指示書の作成や、出庫担当部門への引継ぎ
5. 出荷管理:出荷した製品の情報管理
生産管理が適切に行われないと、製品の品質低下やコスト増、納期遅れなど、経営に打撃を与える問題が生じます。
フローによって全体の業務が一つの流れとして把握されていれば、どの作業がボトルネックとなり生産性の低下を招いたのか見つけやすくなります。
このため、製造業における業務フローは生産工程を可視化して整理し、作業工程の最適化に活用できる重要なツールとなっています。
業務フローの書き方
業務フローの作成を始める際には、準備をせずにフロー図を書き始めるのではなく、手順に沿っていくと効率よく進められます。
具体的には次のような4つのプロセスがあります。
1. 業務フロー作成の目的を決める
2. 担当者や部署を明確にする
3. 手順や作業を把握する
4. 業務フロー図に記載する作業を確定する
1. 業務フロー作成の目的を決める
まず、これから作成しようとしている業務フローが何を目的としているのかを明確にします。
目的に応じてフロー図に記載する内容が異なってくるからです。
例えば、既存の業務を可視化するために作成する場合と、業務の課題解決のために作成する場合とでは、含める範囲や詳細に記載する内容が変わってきます。
実際にフロー図を作り始めるとどの作業も必要に感じてあれもこれも含めたくなりますが、それでは図が複雑になってしまいます。
目的がはっきりとしていることで、作成する業務フロー図に記載が必要な作業の取捨選択が容易になります。
2. 担当者や部署を明確にする
目的が決まったら、その業務の関係者を挙げていきます。
社内で担当している部署だけでなく、顧客・得意先や、加工外注先・部品仕入れ先といった協力会社も含めます。
関係者が把握できていると情報収集する際に聞き忘れるということがなくなり、情報の取りこぼしの防止につながります。
3. 手順や作業を把握する
関係者へのヒアリングや、マニュアル等の資料のチェックを通して、これまでどのような流れで作業が行われてきたのか一つひとつ確認していきます。
ヒアリングでは、社内の部署ごとに次の内容を聞き取ります。
① 何の情報(入力情報)をもとに
② どんな行為をして(作業・行為)
③ 何の情報(出力情報)を作成しているか
例えば、受注管理について聞き取った場合は、①は顧客からの注文書、②は営業部門による受注情報の登録作業、③は受注情報があります。
このように業務の流れに沿って聞き取りを繰り返し、作業のつながりを見える化していきます。
情報収集の際は、担当者が改善したいと思っている点など現場の意見も拾い上げることがポイントです。
業務フローは現場の声を反映させてこそ有効で適正に活用されるからです。
同時に、ヒアリングを通して気がついた課題についてもヒアリングシートに追記していきます。
4. 業務フロー図に記載する作業を確定する
把握できた手順や作業の中には、業務フローに明記する必要がないものも含まれています。
フロー作成の目的に照らし合わせながら、要・不要に振り分けます。
実際に行われている業務の流れに沿って時系列に並べ替えたり、必要に応じて統廃合をしたりして整理します。
整理する判断基準は、担当者、期限や実施のタイミング、所要時間などです。
同じような作業で一つにまとめられるものは、統合すると作業の効率化にもつながります。
実施のタイミングや分岐なども考慮し、最終的に取り組みやすい流れに並べ替えが完了したら、業務フロー図に記載します。
記載した作業は流れがわかるように矢印の接続線でつないだら完成です。
業務フローを書くためのポイント
誰が見ても業務の流れを正しく理解できる業務フローを作成するためのポイントを3つ紹介します。
シンプルに書く
わかりやすい業務フロー図とは、シンプルで見やすいものです。
なるべくシンプルにするために、使用する記号の種類と数は増やし過ぎないようにします。
製造業は業務の規模が大きく複雑になるため、フロー全体が長くなる可能性が高くなります。
その場合は無理に1枚にまとめようとせず、「接続」の記号を用いてページを跨ぎ、1枚のシートに記載する記号の数を調整しましょう。
シンプルな業務フローは変更があった時に更新するのも簡単というメリットもあるので、情報を整理してできるだけ簡潔にまとめるとよいでしょう。
始まりと終わりを明確に
業務の始まりと終わりを担当者に確認し、それぞれを一つに絞ります。
どこから業務が始まり、どこで終わるのかがはっきりと示されていないと、フローを見た時に誤って理解してしまう可能性があるからです。
例えば、製造業の受注管理フローでは、作成する目的に応じて「顧客」からの「引合」から始めることも「発注」から始めることも可能です。
誰が見ても目的が理解でき、業務の流れを簡単に追えるよう、業務の始まりと終わりを明確に示しましょう。
時系列に書く
業務フロー図の縦軸は、上から下へ流れる時間軸です。
記載する作業は順番に上から配置し、作業ごとの関係性がわかるようにします。
時系列がずれてしまうと図が見づらくなるだけでなく、実際の作業の流れと異なるフローになってしまいます。
特に製造業では社内外の多くの担当者が関わっているため、業務フロー上での作業のタイミングにずれが生じないよう時系列を揃えることを意識しましょう。
まとめ
製造業における業務フローは、多岐に渡る工程の各作業を一つの流れの中で整理し、生産管理上の課題を解決するツールとして活用できるものです。
実際に業務フローを作成する際の準備として、目的の決定、担当者や部署の明確化、手順や作業の把握、フロー図に記載する作業の確定といった手順を踏むと、目的にかなったフローの作成を効率よく進められます。
業務フローは誰にとっても見やすく理解しやすいものでなくてはならないため、業務の始まりと終わりがはっきりとしたシンプルな時系列の図を書くことを意識して作成します。
ぜひこれらの手順やポイントを参考にして業務フローの作成に取り組んでみてください。
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