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経済産業省による「未来人材ビジョン」これから求められる人材と雇用のあり方

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デジタル化の推進やカーボンニュートラル実現などの世界的な取り組みにより、従来の産業構造や労働需要、人材政策のあり方が大きく変わっていくと予想されています。
未来に待ち受けるこうした状況に対応するため、経済産業省は今後の人材政策について検討するための「未来人材会議」を主催し、2022年5月「未来人材ビジョン」を公表しました。

この記事では「未来人材ビジョン」の概要や公表された背景、将来必要とされる人材像、具体的な施策などを解説します。これからの雇用・人材育成や教育の方向性を知るために、ぜひ参考にしてみてください。

「未来人材ビジョン」について

「未来人材ビジョン」とは、2022年5月に経済産業省が発表したレポートのことです。
産業構造の転換を見据え、今後の日本での人材政策について検討された「未来人材会議」の内容をまとめたもので、未来を支える人材の確保・育成に関する方針と、取り組むべき課題、具体的な施策を示しています。
これからの社会で必要となる能力やスキルを示し、雇用システムと人材システムを一体化することで、学生から社会人まであらゆる世代で議論することを求めています。

「未来人材ビジョン」が示す日本企業の現状

「未来人材ビジョン」で公表された資料では、日本の現状がさまざまな切り口で示されており、日本企業の問題点が浮き彫りになっています。
明らかにされた課題としては、まず日本企業での従業員エンゲージメントが世界最低水準であること。アメリカ・カナダが34%、ラテンアメリカと南アジアが24%などであるのに対し、日本は5%とかなり低い数字となっています。

また、現在の勤務先で働き続けたいと考える人も52%と世界的に比較すると突出して少なく、転職意向のある人の割合は25%、独立・起業志向のある人の割合は16%にとどまるなど、積極的な意識を持つ従業員が少ないのが現状です。
日本企業では昇進が遅く年収が低いことも際立っています。課長への昇進は38.6歳、部長への昇進は44歳となっていますが、海外諸国と比べると、シンガポール、アメリカ、タイよりも遅く、転職して賃金が増加するケースも少ないのが実情です。

さらに、現在のスキルとこれから求められるスキルとの間にギャップがあることも、4割以上の日本企業が認識していますが、OJT以外の人的投資を行っている企業の割合はかなり少ないというデータが示されています。
社外学習や自己啓発を行っていない人の割合は46%と、こちらも海外と比較すると群を抜いて多く、企業が人材を育てておらず、従業員も自主的に学ぶ姿勢がない状態にあることがわかります。

「未来人材ビジョン」が公表された背景

少子高齢化、キャリアの多様化など、企業と働く人を取り巻く社会環境は変化し続けています。
今後、カーボンニュートラルやDX化が進めば、さらに産業構造や労働需要も変わっていくでしょう。日本企業がこれまで重視してきたスキルや知見、特性が通用しない世の中になることも考えられます。

しかし、先ほどのデータが示すように、現在の日本企業は、人材需要や事業環境の変化を予測し、時代が求める人材を育てることができていません。日本の競争力は低下の一途をたどっており、国際競争力はこの30年で1位から31位へと大きく転落しています。
そうした背景の中、再び世界に認められる国を目指す取り組みを検討するために「未来人材会議」が設置され、公表されるに至ったのが「未来人材ビジョン」です。
企業だけでなく個人、学校・官公庁も現状をしっかりと認識し、未来のためにできることを議論するきっかけにして欲しいという想いが「未来人材ビジョン」には込められています。

▼参考
経済産業省「未来人材ビジョン」
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531001/20220531001-1.pdf

「未来人材ビジョン」で求められる人材像

「未来人材ビジョン」では、これからの時代に必要となる能力やスキルなど、求められる人材像も示されています。
基礎能力や高度な専門知識だけでなく、身につけて欲しい能力・姿勢として挙げられているのは以下の4つです。

(1)常識や前提にとらわれず、ゼロからイチを生み出す能力
(2)夢中を手放さず一つのことを掘り下げていく姿勢
(3)グローバルな社会課題を解決する意欲
(4)多様性を受容し他者と協働する能力

これまでは、ミスがないことや責任感、まじめさなどが重視される傾向にありましたが、2050年にはデジタル化・脱炭素化という大きな構造変化によって、現在の産業を構成する職種のバランスが大きく変わっていきます。
「問題発見力」や「的確な予測」などが求められるエンジニアのような職種の需要が増え、その一方で、事務・販売従事者といった職種に対する需要は減り、事務・販売従事者を多く雇用する産業の労働需要は大きく減少すると推測されています。
「未来人材ビジョン」では、こうした変化に対応するため、時間軸を分けて人材育成を整理することが重要だと解説しています。
この4つの能力・姿勢からは、与えられる教育や学習を受動的にこなすだけでは身につかない、根源的な意識や行動面に対しての能力や姿勢が求められていることがわかります。

「未来人材ビジョン」これから向かうべき2つの方向性

「未来人材ビジョン」では、先に紹介したような人材が増え、活躍できる社会になるように、雇用・労働から教育まで社会システム全体を見直し、企業として個人として積極的に取り組んでいくことが重要だと訴えています。
これから向かうべき方向性として示されているのが、下記の2つです。

旧来の日本型雇用システムからの転換

かつての経済成長の下で日本は、旧来の終身雇用型の雇用形態を維持しながら、製造業を中心として、国際的な競争力を維持してきましたが、1990年代から日本の経済成長が低迷し、日本型雇用形態の限界が見え始めました。
こういった状況を打開するためには、日本特有の終身雇用制度やそれに伴う新卒一括採用などの雇用戦略の大きな転換が求められています。
スキルを活かして活躍する社会へと変化するためには、企業側が多様な人材を受け入れる労働環境を提供するとともに、労働者側が能動的にスキルや経験を重ねる必要があります。

具体的な取り組みとしては

・人的資本経営にシフトする
人材を投資すべき資本と捉えて教育や育成などを行い、価値を高めて企業の成長につなげる
・企業と個人が対等な関係を築く
1つの企業内に個人を囲い込むのではなく、お互いに「選び、選ばれる」対等な関係を築く(詳細な取り組みとして、採用の間口を広げる、中途採用・通年採用を行う、兼業や副業の推進など)

などが推奨されています。

好きなことに夢中になれる教育への転換

従来の教育は、同じ学年やクラスの中で画一化された知識を教える詰め込み型でしたが、これからの時代に求められるのは、個々の特性を活かした教育です。
子供たちが持つ多様性を受け入れ、好きなことに繰り返し挑戦し、成功体験を詰める教育環境を整備することが必要になります。

具体的な取り組みとしては

・自由に学べる環境作り
授業を通して学ぶ教科学習だけでなく、年齢や場所、時間を問わず学べる環境を整備(企業の研修教材や大学講義資料などを公開し、誰でもアクセスできるようにするなど)
・ITやデジタルの活用
タブレットやパソコンなどICTを使用し意欲的な学習につなげる、AIなども活用した先進的な学習方法も取り入れて教育現場の負担軽減と効率化を図るなど

などが推奨されています。

まとめ

  • 経済産業省が発表した「未来人材ビジョン」とは、未来を支える人材に関する方針と具体的な施策が示されたレポートのこと
  • 「未来人材ビジョン」で求められているのは、常識にとらわれず意欲を持って問題解説できる能力や姿勢をもつ人材
  • 「未来人材ビジョン」はこれから向かうべき方向性として、日本型雇用システムからの転換と好きなことに夢中になれる教育への転換を挙げている

この記事を書いた人

イーポート システム開発部
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