上司を一発で説得する!アプリ開発の企画書・稟議書の書き方【テンプレート付】
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「このアプリがあれば、業務が劇的に効率化するはずだ!」
「うちの会社も、新規事業としてアプリを始めるべきだ!」
そんな思いで考えた企画も、上司に「それって儲かるの?」「本当に必要なの?」と一言で却下されてしまい、悔しい思いをした経験はありませんか?
企画が通らないのは、アイデアが悪いからではありません。多くの場合、上司や経営層が納得する「伝え方」ができていないだけなのです。素晴らしいアイデアや熱意だけでは、なかなか会社の予算は動きません。特に経営層は、常に「投資」と「リターン」というシビアな視点で物事を判断しています。
この記事では、アプリ開発のプロジェクトを前に進めるための「武器」となる、説得力のある企画書・稟議書の書き方を、具体的な構成要素とテンプレート付きで徹底解説します。
この記事を最後まで読めば、あなたの企画の承認率を飛躍的に高めることができるはずです。
なぜあなたの企画は通らないのか?上司・経営層の「視点」を理解する
まず、企画書や稟議書を書く前に、最も重要な心構えについてお伝えします。
それは、決裁者である上司や経営層が何を知りたいのかを理解することです。彼らが見ているのは、主に以下の3つのポイントです。
1. Why?(なぜ、今やる必要があるのか?)
- 現状の課題
現状の何が問題で、それを放置するとどんな損失(金銭、時間、機会)があるのか?
- 必要性・妥当性
なぜ他の施策(既存システムの改修、ツールの導入、業務フローの変更など)ではなく、多額の投資をしてまで「アプリ開発」がベストな解決策なのか?
- 緊急性
なぜ「今」やる必要があるのか?来期ではダメなのか?
決裁者は、現状維持バイアスの中で常に数多くの案件を比較検討しています。その中で、あなたの企画の「優先順位」を上げてもらう必要があるのです。
2. How much?(いくらかかって、いくら儲かるのか?)
- 投資額
開発にかかる初期費用はいくらか?サーバー代や保守運用費などのランニングコストは?
- リターン
それによってどれだけのコストが削減でき、あるいはどれだけの売上が見込めるのか?
- 投資対効果(ROI)
投じた費用を、どれくらいの期間で回収できるのか?
結局のところ、企業活動は利益を追求するものです。「儲かるのか?」という問いに対して、希望的観測ではなく、具体的な数字に基づいた根拠を示すことが絶対条件です。
3. What if?(もし失敗したらどうするのか?)
- リスクの想定
計画通りに進まなかった場合、どのようなリスクが考えられるか?
- 対策
そのリスクに対して、どのような対策を考えているのか?
完璧な計画など存在しません。考えられるリスクを正直に提示し、それに対する具体的な対策をセットで示すことで、「この担当者は物事を多角的に見れているな」「きちんとリスク管理も考えているな」という信頼に繋がります。
企画書・稟議書が、これらの疑問に明確に客観的な事実と数字で答えられていれば、承認される確率は飛躍的に高まります。
上司を説得する稟議書の8つの構成要素と書き方
それでは、実際に稟議書を作成していきましょう。以下の8つの要素を盛り込むことで、論理的で説得力のある構成になります。
「営業部門の日報業務効率化アプリ」を例に、書き方のポイントを見ていきましょう。
1. 件名
書き方のポイント
内容が一目でわかるように、「目的」と「内容」を簡潔に記載します。決裁者は多くの稟議書に目を通すため、件名だけで重要性が伝わるように工夫しましょう。
具体例
「営業部門の日報業務効率化を目的としたスマートフォンアプリ開発プロジェクトに関する稟議」
2. 結論(Executive Summary)
書き方のポイント
忙しい決裁者が最初に目を通す、あるいはここしか読まない可能性もある最も重要な部分です。稟議の「目的」「必要な予算」「得られる効果」を2〜3行で要約します。
具体例
本稟議は、現在非効率な運用となっている営業部門の日報業務を改善するため、初期開発費用XXX円にて業務用スマートフォンアプリを開発するものです。
これにより、年間XXX時間の工数削減(XXX円相当のコスト削減効果)を見込んでおり、本プロジェクトの実施についてご承認をお願いする次第です。
3. 現状の課題と背景(Why?)
書き方のポイント
現状の何が問題なのかを、具体的な数字を交えて客観的に記述します。「大変」「非効率」といった主観的な表現ではなく、「誰が」「何に」「どれくらいの時間やコスト」を費やしているのかを明確にし、課題が深刻であることを示しましょう。
具体例
現状の課題
- 現在、営業担当者20名が、帰社後に各自のPCでExcelの日報を作成・提出している。
- フォーマットが統一されておらず、写真の添付や上長への報告・確認作業が煩雑で、1人あたり平均30分/日の時間が費やされている。
- 提出されたExcelファイルは各々で保管されており、データとして横断的な分析ができない状態にある。
課題による損失
- 月間の日報作成時間は合計200時間(30分 × 20名 × 20営業日)に及び、残業代として年間XXX円のコストが発生している。
- 報告の遅れやデータの未活用により、成功事例の共有や迅速な営業戦略の立案・改善が困難な状況にある。これは重大な機会損失である。
4. 目的とゴール設定(What?)
書き方のポイント
このアプリ開発で何を達成するのか、測定可能なゴール(KGI/KPI)を設定します。ゴールが明確であればあるほど、プロジェクトの価値が伝わり、完了後の成果も評価しやすくなります。
具体例
目的
報告業務の抜本的な効率化と、蓄積された営業データの戦略的活用による営業力の強化。
KGI(重要目標達成指標)
日報作成に関する工数を、アプリ導入後6ヶ月以内に50%削減する。
KPI(重要業績評価指標)
- アプリのデイリーアクティブユーザー率(DAU率)80%以上を維持。
- 日報提出率100%を達成。
- アプリで蓄積されたデータを用いた営業戦略会議を月1回実施。
5. 提案内容(How?)
書き方のポイント
どのようなアプリを作るのか、ITに詳しくない決裁者にもわかるように、主要な機能を箇条書きで簡潔に説明します。ここでは詳細な仕様ではなく、「この機能で、あの課題がこう解決される」というストーリーが伝わることが重要です。
具体例
上記の目的を達成するため、以下の機能を備えたスマートフォンアプリを開発します。
- スマホ完結の日報作成・提出機能
外出先の隙間時間で、テンプレートに沿って簡単に入力・報告が可能。
- 写真の簡単アップロード機能
スマホで撮影した現場写真や資料を、その場で日報に添付。
- GPSによる訪問先記録機能
訪問先企業をGPSで記録し、手入力の手間を削減。
- 上長へのプッシュ通知・承認機能
日報が提出されたら上長に即時通知。アプリ上で確認・承認が可能。
- データ分析・閲覧ダッシュボード機能
蓄積された日報データを自動で集計・グラフ化し、営業活動の可視化を実現。
6. 投資対効果(ROI)の試算(How much?)
書き方のポイント
ここが稟議を通すための最重要パートです。「投資」と「効果」を明確に数字で示し、採算が取れるプロジェクトであることを論理的に証明します。
具体例
【投資額】
- 初期開発費用: 500万円(株式会社イーポート 見積もり)
- 月額保守運用費用: 5万円(サーバー代、メンテナンス費用)
- 初年度合計投資額: 560万円
【期待できる効果(リターン)】
コスト削減効果
- 月間100時間の工数削減 × 担当者平均時給2,500円 = 月額250,000円
- 年間削減効果:3,000,000円
【投資対効果(ROI)】
初年度投資額 560万円 ÷ 年間削減効果 300万円 = 1.87
本プロジェクトは、約1. 9年で投資回収が可能な見込みです。
7. プロジェクトの体制とスケジュール
書き方のポイント
誰が責任を持って進めるのか、いつまでに完成させるのかを明確にします。
具体例
プロジェクト体制
- プロジェクト責任者: 営業部 〇〇 〇〇(部長)
- プロジェクト担当者: 営業企画課 △△ △△
- 開発パートナー: 株式会社イーポート
スケジュール(予定)
- 2025年7月~8月: 契約・要件定義・設計
- 2025年9月~11月: アプリ開発・テスト
- 2025年12月: リリース・社内導入研修
8. リスクと対策(What if?)
書き方のポイント
考えられるリスクを正直に書き、その対策もセットで提示することで、計画の堅実さと思慮深さを示し、決裁者の信頼を得ます。
具体例
想定されるリスク
- 1.現場の従業員がアプリを使ってくれない
- 2.開発中に仕様変更が重なり、予算を超過する
リスクへの対策
1に対して
開発段階で主要な営業担当者へのヒアリング会を実施し、現場の意見を反映。シンプルな操作性のUI/UXを最優先する。導入時には丁寧な説明会を開催し、利用を促すインセンティブも検討する。
2.に対して
まずは必要最小限の機能(MVP:Minimum Viable Product)で開発・リリースし、効果検証後に段階的な機能追加を行うことで、初期投資とリスクを抑制する。
【ダウンロード可能】そのまま使える稟議書テンプレート

上記の8つの要素を盛り込んだ、シンプルな稟議書のテンプレートをご用意しました。以下のリンクからダウンロードし、貴社のフォーマットに合わせて自由にカスタマイズしてご活用ください。
まとめ:企画を通す鍵は「相手の視点」と「専門家の知見」
素晴らしいアイデアも、相手に伝わらなければ価値を生みません。アプリ開発の企画書・稟議書では、「会社の課題解決と利益のための投資提案」として、客観的な事実と数字を基に、決裁者の疑問(Why? How much? What if?)に先回りして答えることが重要です。
しかし、「自社の最適機能がわからない」「費用対効果の試算が難しい」「企画書のレビューが欲しい」と悩む方も多いでしょう。
株式会社イーポートは、お客様のビジネスを深く理解し、企画の初期段階から伴走。課題整理、最適機能提案、費用対効果算出、説得力ある企画書作成まで支援します。
「何から始めればいいかわからない」段階でもOKです。あなたの思いを形にし、プロジェクトを成功へ導くため、お気軽にご相談ください。
企画・構想段階からイーポートに相談ください
この記事を書いた人

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