SESや受託システム開発会社におけるプライバシーマーク(Pマーク)の重要性は?
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デジタル社会の進展により、個人情報の収集・利用はあらゆる業種で当たり前のように行われるようになりました。中でも、SES企業や受託系のシステム開発やクラウドサービス、Webマーケティング、SaaS事業などを展開するIT業界は、日常的に多くの個人情報を取り扱う分野です。
そのような背景の中、「個人情報を正しく管理している会社」であることを第三者機関が証明するプライバシーマーク(Pマーク)制度への注目が高まっています。
本記事では、特に大企業と取引のある(もしくは、これから開拓したい)SES企業や受託系のシステム開発におけるプライバシーマーク取得の意義や、実際のメリット、取得のポイントまでをわかりやすく解説します。
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プライバシーマーク(Pマーク)とは?
プライバシーマーク(Pマーク)は、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が運営する認証制度です。
この制度は、個人情報を適切に取り扱っている企業に対して「信頼の証」として付与されるもので、認定された企業はPマークロゴを使用し、自社の信頼性を対外的にアピールできます。
・対象:個人情報を取り扱うすべての民間事業者
・有効期限:2年間(更新審査あり)
・審査項目:JIS Q 15001に基づいた管理体制の構築、運用、改善状況の確認
Pマークを取得することで得られる5つのメリット
1.【信頼性の向上】受託開発やBtoBビジネスでの優位性
IT企業の多くは、クライアント企業のシステムやサービスを開発・運用する立場にあります。特に顧客管理(CRM)やECサイト、SaaS、業務システムなど、個人情報を大量に扱う案件では、「情報の適正な取り扱い」が絶対条件です。
信頼性向上の背景と影響:
- Pマークを取得していない企業に比べ、情報管理体制が外部から見て可視化されているため、取引先に安心感を与える。
- セキュリティトラブルが頻発する現代では、認証の有無が契約判断の決定打となる場面もある。
- 競合他社との比較検討時、「Pマーク取得済」というだけで初期の信頼を獲得しやすい。
実務的な効果例:
- クライアントとのNDA締結や個人情報取扱契約のスムーズ化。
- 商談時に「弊社はプライバシーマーク取得済です」と伝えるだけで安心され、説明コストが減る。
- 一部の企業では、「Pマーク未取得の業者は除外」というケースも存在。
2.【営業面での武器】入札や大手案件への参入ハードルを下げる
大企業や官公庁との取引では、情報セキュリティや個人情報保護に関する一定の基準を求められることが一般的です。その中で、Pマークは「取引のためのパスポート」のようなものとして機能する可能性があります。
具体的な営業上のメリット:
- RFP(提案依頼書)に「プライバシーマーク取得企業であること」が明記されている案件に応募できる。
- 一次審査や書類選考でPマーク有無がふるい分けの基準になることも。
- 業務委託契約書における「個人情報の適切な管理体制」の要件を満たすエビデンスとして活用できる。
特に効果が高いシーン:
- 公共案件(官公庁、教育機関、自治体など)
- BPO、アウトソーシング、受託開発などの請負系業務
- 大手SIerや上場企業との直接・二次請け契約時
3.【社内意識の向上】従業員のセキュリティ意識が高まる
プライバシーマーク(Pマーク)取得には、文書の整備だけでなく、実際の運用や教育が求められます。その過程で、従業員全体の情報リテラシーやセキュリティ意識が自然と向上していきます。
教育・意識向上のポイント:
- 年1回以上の教育訓練・テストが義務化されている(社内研修やeラーニング等)。
- 個人情報の取り扱いルール(画面ロック、印刷物管理、パスワード管理等)を全員が理解・実践する仕組みを構築。
- 万が一の 個人情報事故(紛失・誤送信など)の緊急事態への準備を通じ、有事の対応力も養われる。
結果として得られる効果:
- ヒューマンエラーの減少
- 社内のセキュリティ文化の定着
- プロジェクト横断での統一ルールができることで、属人化防止・標準化にもつながる
4.【採用・ブランディング】求職者やステークホルダーへのアピールに
近年、「安心して働ける企業か?」という観点で企業を選ぶ求職者が増えています。特に、情報管理やガバナンス体制を重視するエンジニア・IT系人材に対して、プライバシーマーク(Pマーク)の取得が、会社としての安心と信用性を高める効果があります。
求職者への訴求ポイント:
- 「情報を適切に管理する企業」という安心感
- 「体制が整った企業」「教育環境がある職場」としての印象
- 内定者や新卒採用において、他社との差別化材料として活用可能
ステークホルダーへの効果:
- 投資家や取引先企業に対して、コンプライアンスと内部統制の証明としてPマークを提示できる。
- 金融機関(融資審査)や保険業者の評価指標として有利になる場合も。サイバー保険などでは、Pマークを取得していると保険料が下がります。
5.【取引先審査の短縮】セキュリティチェックの簡略化
BtoBで新しいシステムを導入する際や委託契約時に、セキュリティチェックシートの提出が義務づけられるケースが増えています。
セキュリティチェックシートとは:
- SaaSやクラウドを提供する企業に対し、取引先企業が情報管理体制を確認するための質問リスト。
- 数十項目〜数百項目に及ぶ場合があり、対応に非常に手間がかかる。
Pマークがあると…
- 「プライバシーマーク取得済」であることを提示すれば、一部項目の回答を省略できるケースが多い。
- セキュリティ体制の全体像を文書化してあるため、回答書類の使い回しが可能。
- 結果的に、営業スピードの向上・契約までの時間短縮につながる。
SESや受託システム開発などのIT企業がPマークを取得する際のよくある懸念
1. 書類作成が煩雑そう
プライバシーマーク(Pマーク)は、JISQ15001の要求事項を満たすことが必要です。JISQ15001では、〇〇の手順を文書化すること、などといった要求事項が多々あり、規定がかなり分厚い文書となります。一からこの文書を作るのはなかなか骨が折れる作業です。
2. JIS Q 15001が難解
JISQ15001の規格書を読んでも、理解しづらい箇所が多々あります。例外事項も多く、全体像を把握するためには時間がかかります。大企業にあるような専門の部署がない会社では、通常の業務外の話になりますので、負担が大きいと考えられます。
3. 人的リソースが足りない
通常業務で手一杯であることが多く、プライバシーマーク(Pマーク)申請の準備にかける時間を確保できない会社が多いのではないでしょうか。また、専門性も必要となりますので、プライバシーマーク(Pマーク)を取得した会社に在籍していたというだけでは、対応できない箇所が多々出てきます。特に中小企業においては、そのような知識の専門の担当者がいることは稀だと考えられます。
解決策としては、以下が考えられます。
– Pマーク取得支援のコンサルティングを活用する
– 雛形(テンプレート)や教育動画を活用して効率化する
プライバシーマーク(Pマーク)の規定集を購入することも一つの方法ではありますが、自社向けにカスタマイズする手間や、審査対策を考えると、Pマーク専門のコンサル会社に依頼する方がコストパフォーマンスがいいかもしれません。
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プライバシーマークとISMS(ISO27001)の違いとは?
比較項目 | プライバシーマーク(Pマーク | ISMS(ISO27001) |
対象範囲 | 個人情報のみ | 情報資産全般(機密情報含む |
運営団体 | JIPDEC | 民間ISO認証会社 |
審査難易度 | 中(中小企業向き) | 高(構築コスト大) |
信頼性 | 国内での信頼性が高い | 海外取引・大手向けに有効 |
まとめ:PマークはIT企業が大企業と契約するためのパスポート
SESや受託システム開発などのIT企業におけるPマーク取得は、単なるステータスではありません。
– 営業力の強化
– 取引拡大
– 情報リスク対策
– 社内の体制整備
といった多面的なメリットを得られる制度です。
これからPマーク取得を検討している企業は、社内の業務フローの棚卸しや、情報管理の仕組みを整える絶好の機会と捉え、ぜひ前向きに取り組んでみてください。
参考リンク(外部・内部)
– JIPDEC「プライバシーマーク制度」
– 従業員20名以下のPマーク取得・更新支援なら「Pマーク楽々取得(更新)パック」
この記事を書いた人

- 代表/ITコーディネーター
- システム開発と製造業のDX推進、製造業の企業価値を高めるプラットフォーム/ファクトリーサーチの運営を中心に、東京と名古屋を拠点に活動しています。プロフィールはこちら