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「健康経営優良法人認定制度」とは?制度の概要とメリットの解説

公開日:2023年9月28日

サービス残業を含んだ長時間労働などの労働環境が問題視される中、従業員の健康に配慮した働きやすい環境を整備することが企業に求められるようになってきています。
そのような中で近年注目を集めているのが「健康経営優良法人」です。
本記事では、健康経営優良法人の認定制度の概要や、認定されることのメリットを解説します。

健康経営優良法人認定制度の背景と目的

健康経営優良法人制度は、日本社会の課題解決のための戦略の一つとして政府が推進してきました。

制度の背景

健康経営優良法人認定制度の背景には、少子高齢化による労働力人口の減少があります。
深刻な状況にある少子高齢化は、2065年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は38%台の水準になると推計されています。
そのような人口減少社会における経済成長戦略として、政府は2014年に「日本再興戦略」を打ち出しました。
その中で「健康経営」についても言及されています。
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することです。
これは従業員等の健康の保持・増進につながる取り組みは将来的に収益性等を高める投資であるという考えに基づいています。
1980年代にアメリカの臨床心理学者ロバート・ローゼンが提唱した「ヘルシー・カンパニー思想」が起源とされています。
英語ではHealth and Productivity Managementといい、従業員の健康と労働の生産性を同時にマネジメントしていこうという考え方です。
この健康経営に対する顕彰制度として始まったのが「健康経営優良法人認定制度」です。
元々2014年度から東京証券取引所の上場会社が選定対象となる「健康経営銘柄」がありましたが、2016年度に健康経営優良法人認定制度が創設されました。

制度の目的

健康経営優良法人認定制度の目的は、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を「見える化」し、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから評価を受けられる環境を整備することです。
健康経営優良法人認定制度は大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれており、それぞれに期待される役割があります。
・大規模法人:グループ会社全体や取引先、地域の関係企業、顧客、従業員の家族などに健康経営の考え方を普及拡大していく「トップランナー」の一員としての役割
・中小規模法人:引き続き自社の健康課題に応じた取り組みを実践し、地域における健康経営の拡大のために、その取り組み事例の発信等をする役割

健康経営優良法人認定制度の認定基準の概要

健康経営優良法人として認定されるためには、対象の部門で必須とされる要件を満たす必要があります。

認定基準の評価項目

大規模法人部門・中小規模法人部門とも次の5つの大項目があります。

1.経営理念
2.組織体制
3.制度・施策実行
4.評価・改善
5.法令遵守・リスクマネジメント

この5つの大項目の中に、中項目、小項目があり、それぞれ評価項目が設定されています。

大規模法人部門・中小規模法人部門の相違点

大規模法人部門と中小規模法人部門では評価項目や認定要件が異なります。
例えば、各大項目では以下の違いが見られます。

・ 経営理念では、大規模法人部門では「自社従業員を超えた健康増進に関する取り組み」が小項目に設定され、大規模法人がトップランナーとして健康経営を普及することが期待されています。
・ 組織体制では、中小規模法人部門の評価項目には「健康づくり担当者の設置」「40歳以上の従業員の健診データの提供」がありますが、大規模法人部門では「健康づくり責任者が役員以上」「産業医・保健師の関与」「健保組合等保険者との協議・連携」という3つの評価項目が設定されています。
・ 制度・施策実行は大規模法人部門、中小規模法人部門とも「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」「健康経営の実践に向けた土台づくり」「従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策」が中項目として挙げられており、評価項目も共通しています。
・ 評価・改善では、大規模法人部門では「健康経営の実施についての効果検証」が求められるのに対し、中小規模法人部門では「健康経営の取り組みに対する評価・改善」にとどまります。
・ 法令遵守・リスクマネジメントは共通しており、労働基準法または労働安全衛生法の遵守が評価項目です。

詳しい認定要件は健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」から確認できます。

参考
「ACTION!健康経営」https://kenko-keiei.jp/#about_shinsei

健康経営優良法人認定制度の認定のメリットと影響

健康経営が実践されて従業員が健康を維持できるようになると、業務パフォーマンスが上がり、企業価値も高まります。
健康経営優良法人に認定されるメリットには以下のものがあります。

生産性が向上する

ヘルシー・カンパニー思想でも表現されているように、従業員の健康に経営的な視点から取り組むことで生産性が向上します。
健康経営優良法人の認定要件をクリアするために社内の制度を整えていくと、良質な労働環境を構築・提供できるようになり、従業員の健康意識も高まっていきます。
そして、心身ともに健康であることでアブセンティーイズム(健康問題による仕事の欠勤(病欠))やプレゼンティーイズム(健康問題が理由で生産性が低下している状態)が解消されていきます。
令和3年度健康経営度調査の簡易分析結果では健康経営度の高い企業では有給取得率、有給取得日数が高い傾向が見られました。
優良な健康経営ができている企業では従業員のワーク・ライフ・バランスが推進され、生産性が向上していることが伺えます。

人材の確保・採用につながる

働きやすい環境の提供は従業員の離職防止につながります。
健康経営度調査の分析結果では、健康経営度の高い企業の方が離職率は低い傾向が見られました。
これは2020年における全国の一般労働者の離職率と比較しても低い傾向でした。
また、リクルート効果も期待できます。
健康経営優良法人に認定されるとログマークが使用できるようになります。
このロゴマークは従業員、求職者、取引先企業等のステークホルダーに対して企業情報を紹介する目的に限って広報活動に使用できるものです。
例えば、求人広告や自社のホームページに掲載することで、求職者に対して従業員を大切にしている会社であることをPRすることが可能です。

企業イメージが向上する

健康経営は企業イメージを向上させます。
企業イメージは、消費者の行動や取引先との関係に影響を及ぼすものです。
例えば、同じ品質や内容の商品・サービスがあれば、消費者はイメージの良い企業の商品・製品を選びます。
取引先も「よいイメージをもつ企業との取引は継続しよう」と判断し、取引先との関係も強化されます。
ジョンソン・エンド・ジョンソンが行った調査結果では、健康経営に対する投資1ドルに対するリターンが3ドルになると報告されました。
リターンの中には企業のイメージアップ(ブランド価値上昇、株価上昇)も含まれています。
このように健康経営に取り組むことで、企業価値の向上・ブランディング効果が期待されます。

保険会社による保険料割引

健康経営優良法人や健康経営に取り組む企業向けに、自治体や金融機関などが融資や減免措置、表彰など様々なインセンティブを設けています。
例えば、大手の保険会社では、保険料の5%割引や、無配当総合福祉団体定期保険に対する健康経営保険料率の適用があります。
健康経営の取り組む為にはある程度費用がかかります。
負担軽減のためにもインセンティブを上手に活用してみてください。

まとめ

健康経営優良法人は、労働力人口の減少といった課題に対する成長戦略として政府が推進してきた制度です。
認定を受けた法人は自社の取り組みの発信や、健康経営の考えを普及拡大といった役割が期待されます。
健康経営優良法人に認定されるメリットには、生産性の向上、人材の確保、企業イメージの向上、保険料割引といったインセンティブ等があります。
健康経営への注目が高まってきていますので、健康経営優良法人の認定を目指して取り組みを開始してみてはいかがでしょうか。

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